研究者紹介

長谷川潤  氏 名 長谷川 潤(はせがわ ひろし)
 所 属 医学医療系
 研究分野 神経生理化学
 課題名 痛み・痒み伝達を司る神経回路多様性の分子生物学的基盤
 研究室 http://www.md.tsukuba.ac.jp/younginit/hasegawa/index.html

ヒトの持つ五感のうち、「触覚」は痛みや温度、化学物質、機械的刺激といった皮膚への多様な刺激を受容し、脳に伝達する神経システムです。このような刺激を直接受容する一次感覚神経細胞は、痛みを感知する痛覚神経細胞と圧力を感知する機械刺激覚神経細胞の2種類に大別され、更に分子生物学的・電気生理学的性質により多くのサブタイプに分類されることが知られています。こうした一次感覚神経細胞の多様性が、皮膚への多彩な刺激を脳が正確に認知するために重要な役割を果たしていると考えられています。しかしそれぞれの一次感覚神経細胞がどのような刺激の受容を担っているのか、どのような情報伝達システムを使っているのか、またどのようにしてそれぞれの感覚に特異的な神経回路が形成されるのか、そうした分子機構はよく分かっていません。
本研究では脊髄後根神経節(DRG)に存在する一次感覚神経細胞の多様性を遺伝子発現パターンの違いによって明らかにし、それぞれの神経細胞サブタイプが持つ情報伝達機構や神経回路網が構築される分子メカニズムを解明することを目標としています。DNAマイクロアレイなどのスクリーニングを基に、神経細胞サブタイプ特異的に発現する新奇遺伝子を同定しています。そして、それらの遺伝子が感覚情報伝達や神経回路網構築において果たしている機能を、初代培養神経細胞を用いて生化学的・分子生物学的に解析し、ノックアウトマウスを作製することにより個体レベルで検討していきます。
痛みや痒みは古より医学の中心に位置してきました。しかし、その情報伝達メカニズムは現在なお明らかではなく、そのため治療・緩和法も十分とは言えません。私たちは上記のような研究を通じて、感覚神経回路構築の生物学的基盤を明らかにすると同時に、痛みや痒みの治療に役立つ新たな創薬ターゲットを発掘することを目指します。
最近の業績:Hasegawa et al. (2007) J Neurosci 27, 14404-14414.

    長谷川fig.