研究者紹介

高崎真美  氏 名 高崎(松尾)真美(たかさき まみ)
 所 属 医学医療系
 研究分野 再生医学
 課題名 外胚葉の発生運命を制御する分子メカニズム
 研究室 http://www.md.tsukuba.ac.jp/younginit/takasaki/ESteam/

 体を構成する全ての細胞は、外胚葉、中胚葉、内胚葉と呼ばれる、初期胚において定義される3つの各領域から生じる。我々はこれまでに、神経細胞、感覚系細胞、表皮等を生み出す外胚葉の初期発生に興味を持ち、研究を進めてきた。外胚葉は、分化細胞の種類によって神経外胚葉と非神経外胚葉に分類されるが、外界からの情報の受容に重要な役割を持つ頭部感覚器は、予定感覚プラコードと呼ばれる、頭部神経板に隣接する特殊化した非神経外胚葉領域から分化する。初期発生において、@頭部非神経外胚葉の運命付け、A頭部神経板外側の連続した予定感覚プラコード領域の形成、B感覚プラコードとしての分化決定、C最後に個別の感覚上皮(嗅上皮、水晶体、内耳)の特殊化、が段階的に制御されていると考えられている。「発生の場の中で、感覚プラコードはどのような位置情報で決定されるのか?」という問題について、我々はアフリカツメガエルをモデル生物とした解析から、転写因子Xfoxi1aが予定感覚プラコード領域の形成に必須である事、BMPと抗-Wnt シグナルの組み合わせが、Xfoxi1a発現を制御する位置情報である事を示してきた。
 一方、哺乳類の初期発生における非神経外胚葉の分化機序はほとんど分かっていない。その理由の一つとして、アフリカツメガエルで用いられるアニマルキャップアッセイのようなin vitro実験系が、マウスをはじめとする哺乳類には存在しなかったことが挙げられる。近年、胚性幹(ES)細胞を用いたin vitro分化法が開発され、外胚葉では特に神経細胞への分化に関する研究が国内外で盛んに進められている。我々は、両生類で明らかにした知見をマウスおよび霊長類のES細胞試験管内分化系に応用し、これまで手つかずであった哺乳類の非神経外胚葉発生のメカニズム(特に感覚プラコードの発生)を解明したいと考え、研究を行っている。将来的には、白内障、嗅覚障害、突発性難聴などの感覚器障害をともなった疾患の、幹細胞治療の基盤研究も行っていく予定である。

    高崎fig.