研究者紹介

丹羽隆介  氏 名 丹羽 隆介(にわ りゅうすけ)
 所 属 生命環境系
 研究分野 発生生物学
 課題名 昆虫と線虫を用いた生物発育のタイミングの制御機構の研究
 研究室 http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~rniwa/

生物の発生過程には時間軸に沿った発生ステージがあり、未成熟なステージから成熟に向けて、発生過程が段階的に適切なタイミングで移行する。例えば完全変態昆虫であれば、卵から孵化した後に決まった時期に特定回の幼虫脱皮を繰り返し、その後蛹を経て成虫へと成長する。では、こうした各ステージから次のステージへの移行を決めるタイミングの機構、また幼虫なら幼虫特有の、蛹なら蛹特有の発生プログラムを実現させる発生時期を特定する機構は、どのようなものなのだろうか?こうした発生のタイミング制御は、生物の進化(ヘテロクロニー)や、ヒトの疾患(発達障害、老化に伴う病気)にも大きな影響を持つことが古くから提唱されており、その分子的理解は重要な意味を持つ。しかし、20世紀後半以降飛躍的に解明の進んだ3次元空間における発生制御のメカニズムに比べ、発生のタイミングに関する理解は大きく立ち遅れている。当研究室では、昆虫(ショウジョウバエ Drosophila melanogaster、カイコ Bombyx mori)および線虫(C. elegans)をモデル生物として利用し、発生タイミングの分子機構の解明を目指している。現在は、昆虫の脱皮と変態を司るステロイドホルモン(エクジソン)の生合成の研究、および線虫の幼虫から成虫へのスイッチングに関わるマイクロ RNA と下流の転写因子群の研究を2大テーマとして研究を進めている。今後は、生活様式の異なる生物群である昆虫と線虫をよりインタラクティブに併用した研究スタイルを進めることで、動物界を通じて保存された発生タイミングの分子メカニズムに迫りたい。

    丹羽fig.