研究者紹介

奥脇暢  氏 名 奥脇 暢(おくわき みつる)
 所 属 医学医療系
 研究分野 感染生物学
 課題名 DNAウイルス増殖に関わる細胞核の機能
 研究室 http://www.md.tsukuba.ac.jp/younginit/okuwaki/Oku1/Top.html

ウイルスのゲノムはそのゲノムがDNAであるかRNAであるかに関わらず、一般的に粒子に収納される際には、宿主由来あるいはウイルス自身がコードする塩基性のタンパク質と複合体を形成している。この核酸−タンパク質複合体の形成によって、膨大なDNAあるいはRNAを小さな粒子に収納する事が可能になる。宿主細胞のDNAあるいはRNAもまた、同様の方法で細胞内に収納されている。ヒトの細胞では、3億塩基対ものDNAを直径わずか10ミクロンの細胞核に収納するために、DNAはヒストンをはじめとする塩基性のタンパク質と複合体を形成してクロマチン構造を形成している。核酸-DNA複合体の形成は、転写因子のDNAへのアクセスを制限し、転写や複製に対して抑制的に働く。したがってこれらの反応には、ウイルスでもヒトでも核酸−タンパク質複合体のリモデリングが必要になる。我々の研究室ではアデノウイルスをモデル材料として、核酸−タンパク質複合体のリモデリングに関わる宿主因子を同定し、アデノウイルス増殖過程を明らかにするとともに、宿主因子の非感染細胞における機能解明を通して、細胞内における核酸ータンパク質複合体のリモデリング機構を解明する事を目的として研究を進めている。さらに、染色体を収納する細胞核の構造形成にも興味を持ち、特に核小体の機能と構造に関しても研究を進めている。本研究で扱う宿主因子は、白血病をはじめとする細胞のがん化との関連が示唆されており、宿主因子の機能解明を通して、細胞がん化機構の解明にもつながる可能性がある。また、核小体はリボソーム生合成の場として知られてきたが、細胞周期や細胞のストレス応答など様々な機能を果たしている事が明らかになってきた。さらに、核小体因子の変異によって、がんのみならず様々な遺伝的疾患を引き起こされることが知られている。核小体の構造と機能を解明する事は、これらの疾患の原因解明にとっても非常に重要な課題である。

    奥脇fig.