研究者紹介

西丸広史  氏 名 西丸 広史(にしまる ひろし)
 所 属 医学医療系
 研究分野 生理学
 課題名 哺乳類の脊髄運動中枢の作動メカニズムの解明
 研究室 http://www.md.tsukuba.ac.jp/younginit/nishimaru/n-lab/Welcome.html

私たちの心と体の動きは、中枢神経系にある神経細胞がお互いに結合して形成する神経回路によって生み出されていると考えられています。しかしこれらの神経回路の多くでは、どのような性質をもった神経細胞の電気活動がどのように組み合わさることで個々の回路からの出力パターンができるのか、という基本的なことさえほとんどわかっていません。この問題に取り組むために私たちが研究対象としているのは、歩行を生み出す神経回路です。歩行運動はそれぞれの筋群を支配する運動神経細胞がそれぞれ決まったタイミングでリズミックに発火することによって実現されています。このときの運動神経細胞へのリズミックな入力を形成しているのは脊髄に局在する歩行運動神経回路網です。この回路網は外部からのリズミックな入力なしにリズミックな出力パターンを形成することが可能で、このような性質を持つ回路は一般にCentral Pattern Generator(CPG; 中枢パターン発生回路)と呼ばれています。こうしたリズミックな神経活動は歩行CPGだけでなく、大脳皮質、海馬や脳幹など多くの中枢神経系の部位でみられる普遍的な現象であり、行動に直結する歩行CPGの作動機序に明らかにすることは、脊髄だけでなく他の中枢神経系部位の神経回路の作動原理を知る大きな手がかりになると考えています。私たちは神経細胞の活動をリアルタイムでとらえることができる生理学的研究手法、軸索や樹状突起の詳細を明らかにするための形態学的手法と遺伝子改変技術を用いた特定の細胞の可視化技術やノックアウトマウスを組み合わせることでCPGを構成する神経細胞を同定していきます。これにより、単一神経細胞の振舞いがどのように神経回路の出力に寄与しているのかを詳細に検討します。また神経伝達および軸索誘導に重要な因子のノックアウトマウスを用いてこうした因子がCPGの機能および発達分化にどのような役割を担っているのかを調べています。

    西丸fig.