卒業生からのメッセージ

永宗ラボ    
 氏 名 永宗 喜三郎(ながむね きさぶろう)
 所 属 国立感染症研究所 寄生動物部
 研究室 http://web.me.com/nagamune/Kisa1/Top.html
   

< 筑波大学と若手イニシアティブとわたし >

 私は2008年1月から2009年3月まで、わずか1年ちょっとの間のテニュアトラック経験者です。こんな私が筑波大学「次代を担う若手大学人育成イニシアティブ」(以下「若手イニシアティブ」)について何か書くなんておこがましいにも程があるとは思ったのですが、考えてみると私はある意味、若手イニシアティブの最初の卒業生であるともいえ、HPの賑やかしとしてでもなんでも少しでも若手イニシアティブに恩返しできればと思い、筆を取らせていただきます。

 さて、私にとっての若手イニシアティブなのですが、はっきり言って、とてもよい経験をさせていただいたと感謝しています。私は今まで一貫して「感染症」をキーワードとする研究を続けてきました。そのため若手イニシアティブに集まった異分野の若手研究者達との交流は非常に新鮮な経験でした。若手イニシアティブには異なった専門性を持つ優秀な若手研究者が世界中から集まっており、彼らと知り合えたこと、また彼らと仲間としてあるいはライバルとして過ごした経験は、今もそしてこれからも私の大きな財産です。
 また、若手イニシアティブは2007年度の「若手研究者の自立的研究環境整備促進プログラム」採択によって結成された非常に「若い」組織でしたので、育成推進委員会やメンターの先生方と話し合い、時には対立しながらも共に組織を作り上げてきた経験は非常に得難いものでした。また、他の若手研究者達と相談しながら自分達の研究室を一から立ち上げてきた経験や、突然、国際学会のオーガナイズを任された経験、これらも今では普段の研究室運営や学会活動の基礎として大変役に立っています。

 現在、多くの大学がテニュアトラック制を日本に根付かせるために試行錯誤をしています。最後にこの点について「一応」テニュアトラック経験者の立場から一言言わせていたただきたいと思います。筑波大学を始め「若手研究者の自立的研究環境整備促進プログラム」採択プログラムは、分野横断的で本来なら複数の部局に存在し決して交流することのない若手研究者を、本来の部局から切り離して一ヶ所に集めるというスタイルが多いように記憶しています。これはお手本としている欧米のシステムにはないものだと理解していますが、私はこのシステムが実は日本人にはかなり向いているのではないかとひそかに思っています。日本人は自分を含めて、良くも悪くも自分の専門の中に閉じこもってしまいがちな人が多いと感じています。そこでこのテニュアトラックという武者修行の期間だけは無理矢理にでも専門外の人たちと交流したり、競い合ったりする。それはテニュアとして将来それぞれの専門に戻った時、きっと直接・間接を問わず、テニュアトラック出身者にとって大きな武器になるのではないかと思いますがいかがでしょうか。

 最後に若手研究者としての私を温かく見守って下さった育成推進委員会の先生方やメンターの先生、若手、生命、医学の各支援室の皆さん、若手研究者の戦友達にお礼申し上げます、と共にこれからもどうかよろしくお願い申し上げます。