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・第57回日本生態学会大会にて恩田義彦研究員(田中研究室)がポスター賞(優秀賞)受賞。
2010年3月16日(火)第57回日本生態学会大会に於いて恩田義彦研究員(田中研究室)が「標高が変わると死ぬ季節は変わるか?−標高分布の広いミヤマハタザオの場合−」の発表タイトルでポスター賞(優秀賞)を受賞しました。
要旨
*恩田義彦, 田中健太(筑波大・菅平セ)
植物は移動能力が低いため、個体の周りの環境条件(日射量・水分・土壌栄養・温度など)に適応できなければ生存できない。アブラナ科のミヤマハタザオは緯度がほとんど同じ範囲(約1.5度以内)の中で、標高30mから3000mという非常に幅広い標高帯に分布している。標高が違えば、温度・紫外線強度・二酸化炭素分圧など様々な環境条件が異なり、中でも温度の違いは特に顕著である。本研究では、2008−2009の2年間、南・北・中央アルプスを含む中部山岳地域周辺でミヤマハタザオの個体群生態学的調査を行った。4つの代表的な山域の様々な標高帯に20集団、これ以外の山塊から、分布標高帯の上下端に相当する極端な標高帯のデータを補う8集団、合計28集団を対象とした。まず、温度ロガーを各集団の地中に埋めて地温を記録し、各集団の暑さの指標(測定期間中の温度の上位20%分位点)を算出したところ、標高が高いほど暑い傾向が明瞭に得られた。また、各集団に2〜8個のコドラートを設置して、全個体の葉数・葉サイズ・食害葉数・生死を年2回追跡し、成長率・食害率・生存率を算出した。その結果、食害率と標高の間には明瞭な関係が認められなかったが、生存と標高との間には明瞭な関係があり、それが季節によって変わることが分かった。標高が低い集団ほど夏の生存率が低く、標高が高い集団ほど冬の生存率が低かった。この結果から、高標高集団では冬の寒さが、低標高集団では夏の暑さが集団維持の律速要因であることが示唆された。